ラクトフェリンと疼痛改善

 

 

 

脳内モルヒネの活性化に役立つラクトフェリンは、鎮痛効果にも期待されており、熱の刺激による痛みや内臓痛など様々な痛みに対して作用すると言われています。

ラクトフェインは、痛みを感知する脳はもとより、痛みの発症箇所である末梢組織においても一酸化窒素の産生を促し、中枢と末梢の両面からオピオイドの活性化に寄与して、痛みを和らげます。

鎮痛効果における総合的な軍配はモルヒネに上がりますが、ラクトフェリンにはモルヒネのように体の耐性が生じない分、安全に継続して利用することが出来ます。


 

研究結果より・・・


I我々は、ラクトフェリン(LF)の新規作用として鎮痛効果を発見し、特にLFとモルヒネを併用することによって、モルヒネの用量を1/50から1/100に下げても十分な鎮痛活性が得られることを確認した。本研究では、LFによるモルヒネの耐性発現遅延効果を解析するとともに、LFの作用機序について薬理学的解析を行った。6週齢のICR系雄マウスを用いてテイルフリックテストにより鎮痛活性を評価した。LFは腹腔内投与(100mg/kg)および経口投与(300mg/kg)のいずれによっても、モルヒネ(3mg/kg、ip)との併用によって極めて強い鎮痛活性を示した。また、モルヒネの単独投与を繰り返すと、5日目(5mg/kg)あるいは7日目(3mg/kg)に耐性が発現し、鎮痛活性は消失した。しかし、モルヒネ(3mg/kg)とLF(100mg/kg、ip)を併用すると8日目まで鎮痛活性が持続し、9日目になって活性は消失した。また、モルヒネ(5mg/kg、ip)を5日間反復投与して耐性を発現させたマウスにLFを投与しても、鎮痛活性は得られなかった。さらに、LFの鎮痛効果は、nNOS選択的阻害薬である7-NIあるいはGC阻害薬であるMehylene Blueによって完全に消失した。以上の結果から、LFはモルヒネの鎮痛効果を増強し、且つ耐性発現を遅延させることが明らかとなった。またLFの作用機序として、nNOS選択性にNO産生を促進し、GC-cGMP系を活性化させてμオピオイドの働きを増強することが示唆された。

 

【引用】ミルクサイエンス  ミルクサイエンス 53(4), 315-319, 2004 

日本酪農科学会

 

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【内因性オピオイドとは?】
我々の脳・神経は内因性オピオイドを作っていますが、自分自身は特に意識することはありません。しかし、強い痛みやストレスを受けると内因性オピオイドが脳下垂体から放出され、疼痛やストレスを緩和すると言われています。例えば分娩中には血液中のエンドルフィン濃度は通常の2~3倍に増加し、ピークでは6倍になると報告されています。出産の痛みもある程度は脳内麻薬物質で緩和することができるのです。

 

【オピオイド研究】
1960年代に脳にモルヒネのμ受容体が発見され、オピオイド研究は大きな変貌を遂げました。モルヒネが神経節のμ受容体に結合すると、疼痛シグナルの伝達が遮断されて痛みが緩和されるのです。
末梢で生じた痛みのシグナルは神経細胞を脳へ伝わるのですが、電線と違って神経細胞のあいだには隙間があります。シナプスはラクトフェリンの脳・神経作用に重要な役割を果たしていることがわかってきました。

一方、この研究には大きな副産物がありました。我々の脳もモルヒネ受容体と結合する鎮痛ペプタイドを合成していたのです。それらはエンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン等と呼ばれています。ここではモルヒネ、コデインのように植物性麻薬を外因性オピオイド、脳内で合成される鎮痛物質を内因性オピオイドとそれぞれ呼ぶことにします。麻薬は多幸感・恍惚感を生み出すので、耽溺して依存性に陥る悲惨な中毒患者が後を絶ちません。「生体内でつくられる内因性オピオイドなら中毒と関係がないだろう」と考える方もおられるでしょう。ところが皮肉なことに、内因性オピオイドにも耽溺性があるのです。

母乳を飲んでいる赤ちゃんは、満腹になると満ち足りた表情ですぐに寝入ります。この現象は乳中に内因性オピオイドの存在を暗示します。事実、カゼインの酵素分解物にはオピオイド受容体に結合するペプタイド(カゼモルフィン)が含まれていました。しかし、カゼモルフィンが母乳の快楽物質ではありません。"血液・脳関門"を越え脳脊髄液に取り込まれないからです。ラクトフェリンこそが乳の快楽物質だったのです。

 

(ラクトフェリン研究会資料より抜粋)